夜よ、恋
作詞 車崎計史
「夜よ、こい」と投げかける人はもういない
「夜よ、こい」と言った人は幸せになったのだろうか?
深く息を吸うとあの人の香りがした
大好きだった人は去ってしまった
残されたまっさらな紙に顔を埋め
二人だけの思い出を頭の中で描き出す
意識が細々とした糸のように吸い込まれて
吐息がはね返ると寂しさが込み上げる
「まだ陽は沈んでないの?」と窓を開け
「もう陽は沈んでいるよ」とカーテンを閉める
「夜はいつ明けるの?」と呟いて
「朝が迎えにくるまで」と答える
隣の部屋から騒がしい声が聞こえ
小さな拳で壁を叩いてしまった
「心だけじゃなく手も傷つけるのか?」
鈍い音がそんなことを言ってるような気がした
なんだか虚しくなってベッドに潜り
枕を恋人に見立てて抱き締めた
未来が滲んで見えなくなっていって
今にも萎んで消えてしまいそうで
それでも心が欲するままに叫ぶんだ
木々が奏でるざわめき
自然が奏でるオーケストラ
憮然と構えるオーディエンス
布団を被りながらそんな妄想に浸る
眠ってる間は無敵さ
今宵は一人舞台
この瞬間だけが生きていることを実感させる
そして幕を下ろせばいい
それが苦い思い出を忘れさせてくれるんだ
|