あたしたちは走った
警察も両親も友達も
常識も約束も未来も
安全も幸福も生活も
追いつかないスピードで

きついカーブでステアリングきって
ヘッドライトが照らすその道の先に
灯台の明かりのような
花火の光のような
輝きを見ていたね

そう
瞬いては消え瞬いては消えを繰り返す
それか
咲いては散り咲いては散りを繰り返す
そんな
儚い
淡い
希望を見ていたね

赤い回転灯やコンビニを振り切って走って
全部を通り過ぎて
辺りが暗くなって

あたしあまりに夢中で気付かなかったんだ

ねぇ

そう呟いて助手席を振り返ると
あなたはもういなかった

あたしあなたまで追い越す速度で走ったのかな
だってあなたがもっと速くって言ったのよ
いじわるなランエボに並走されて泣きそうになったり
制服のおまわりさんに怯えたり
道路標識を見落として慌てたり
そんなあたしを見て笑ったじゃない
もっと踏めって笑ったじゃない
だからどんどんスピードを上げたの

飛ばしすぎたかな
でもまだ走れるよ
もっと踏もうか
ねぇ
もっと
飛ばそうか

あたしたちの空まで