静寂と君と夜会
作詞 りんくす
拍手のない舞踏会で君と 二人涙などありもしないまま
つながれぬ手のほどよい寒さが こころの嘘を語ったようだ
「至らないことばかりしてきたな」 睫毛の奥で色を感じる
「そうだね」とこぼす口唇が このごろはうまく動かないんだ
仕方ないさ、諦めだけはずうっと得意なんだ 今まで生きた道もかすんでみえるさ
どこまでも荒んだ荒野には太陽さえ 見放したわたしがいるのだ
音のないオペラとバレエに見とれて そのままでいれたならどれだけ楽だろう
静止した傷に重ねられた手が 確かなものであってほしいんだ
我儘だろう?わたしは弱いだけさ 柔らかい絶望に身を委ねて
まるで海の底に眠るように 生きるふりを続けているのだ
席を立つ君の後ろ姿を 眺めてどちらに行くのかと
伸ばして掴んだ服の裾が 透けて見えて呼吸がつまった
「どこにも行きゃあしないさ」なんて いつもの笑顔で笑う君の
軋んだ思いさえ拭えない こんなわたしが情けないな
後悔など飽きるほど繰り返し ふりきった不幸はそらの塵のように
ため息によく似た自責の涙 大切に思えて捨てられなくて
ああ、どうか叫んでくれたなら 君の苦しみを受け止めたなら
どうにもならない見ないふりも 意味のあるものになるはずなのに
ごめんね、なんていまさら何だ こんな無様に見送っておいて
さよなら、なんて何様なんだ 目をつむるつもりなどないくせに
君を見失ったときのむなしさが あふれるように今をめぐる
もう屍となるその手を 握っていれたら この寒さも
後悔はいまだに繰り返すばかり もういない君を抱きしめられたなら
ため息によく似た自責の涙 乾いた地面を少しだけ彩った
「せっかちだなあ」震えた喉から 泳いだ言葉が本物であるように
今ここで笑っていた君さえも 幻想だとは信じたくないんだ
音のないオペラとバレエに喝采を 一人分の祝福だけを送ろう
あふれる傷に触れたその手は 確かなものではなかったけど
隣の席に残るほのかな熱 陳腐でやさしい存在のあかし
わたしはまた君の面影に おぼれて生きるふりをする
誰もいなくなった舞台で つながれぬ手の暖かさを知る
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