十年扉
作詞 uyaむ
はらり、はためいたスカートが
真っ赤な空の静寂に消えた
十年前の夏の話
蝉時雨の降る古びた神社
周りに広がる稲穂の群れが
夕陽を受けて朱に染まる頃
三つ編み揺らした一人の少女
鳥居を見上げてくすりと微笑む
革靴鳴らして石段上り
彼女のその後を知る者は無し
あ、あ、あ、あ、あの子はどこへ?
はらり、はためいたスカートが
真っ赤な空の静寂に消えた
夕暮れ告げる烏の声に
足音すらも残さないまま
少女が消えて十年目の夏
とある青年が神社を訪ねる
彼が掴んだ唯一の手がかり
古くから残る禁忌の噂
「普段は開かずの神社の扉、十年に一度開くらしい」
時刻は黄昏、逢魔ヶ時
向こうとこちらが交わる瞬間
あ、あ、あ、あ、あの子はここに。
はらり、と靡いた青年の髪
一陣の風が全てを攫う
暗闇に落ちた帳の先に
残るは命の証の赤色
はらり、はためいたスカートが
夢か幻か指先掠め
蜩の細波を引き連れて
斯くも扉は閉ざされた
青年の行方は、未だ知れず。
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