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底亡水
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作詞 蘇季 |
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耳の奥から
何かがはじける音
シャボンよりは儚く
硝子よりも脆い
手の裏に重く伸すのは
嘆きや恨み辛み
それでは片付かぬ
耳を澄ますは洗練された風
彩色(いろ)は匂わん
瞑々の中で
枷は解かれど行く宛てはなくて
しゃがみ込んだ
「もう、いいよ。」
言霊(こだま)さえも響かない
記憶の手綱は古びたゴムのようで
はじけ散る時
玉は散らばり
底には何も残らなくなる
そこから湧き出る水は白く
透明に濁って弧を描く
散り行く様は血潮のよう
廻り巡って地へ還る
思い起せよとなぞ
脳裏に問われども、
我しれぬモノばかりと
言い残す
空白の退路を行けばわかるなら
迷いなくその道を行こう
それでも戻らぬ記憶ならば
所詮それまでと
思い至る
回想録(メモワール)に残された地図に
我の行く先を記すなら
天より遠く
地より遠い
宙の間に途切れ
その場でねむる
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