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冬の田舎
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作詞 野馬知明 |
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冬の田舎は深雪に抱かれ、
白い頭巾を被った小人たちが寒風の中を繚乱する。
藁の香りのする納屋に杉の薪柴を取りに行けば、
ぷすりぷすりと藁沓の跡。
白い頭巾を被った小人たちは、
意地悪な木枯らしに白い道の表を這い駆け回る。
積雪は雪の中にのめりこんだ後ろ足を引っぱり、
急いでも、急いでも進まない藁沓。
白い吐息、赤い頬、ひりひりする耳朶、感覚の失せた爪先。
畑も小石も段々も、みんなみんなホンワリと、
痘痕の化粧のように、白い白い衣を纏い、
冷え冷えと嫋やかにうねる雪の表。
さらさらと粉雪の吹雪く。
ああ、かかる日のノスタルジア。
冬の田舎は掘り炬燵を囲み、
カタカタと木枯らしになる板戸に耳を傾け、
春を待つのが日々の営み。
掘り炬燵は田舎の社交場。
虚飾も嘘もない全裸の会話。
いま、一人の来訪者。
コトコトと板戸を開け、
パタパタと体に纏い付く雪を叩き落す。
ポッポッと燃える燠の火。
口笛を吹く火鉢の鉄瓶。
ああ、かかる日のノスタルジア。
冬の田舎は風呂場の湯気が、
窓の外の雪景色を背景に、
ユラリユラリとフラダンスをする所。
竈に投げ込む湿った杉の薪木、
その吐く溜息が目に染みる。
燃えろ、燃えろ、みんな燃えろ。
赤く、赤く、灰燼になるまで。
どんどんくべろ、薪木をくべろ。
みんな、みんな燃え尽せ。
寒い寒い冬を追い払うため、
わたしの代わりに燃えとくれ。
わたしのこの冷たい命。
わたしのこの冷ややかな体。
炎となってメラメラと燃え上がることを知らないこの唇。
心の冬に冷やされて、硬い蕾の儘のこの胸。
決して溶けることのない万年雪のようなこの心。
みんな、みんな、燃えてしまえ。
こんな体なんか、燃えてしまえ!
ああ、かかる日のノスタルジア。
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