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忘れ物がなくなる気がして
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作詞 野馬知明 |
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陽だまりの 濡れ縁で 爪を切る音
障子開け 覗いたら 父が座ってる
あれほど 大きかった 背中
いまでは 小さく 見えてくる
初めての 栄転を 聞いて呟く
戻るまで この家で 待っている
あれほど 無口だった 父が
今夜は しゃべって 止まらない
父さんのおかげ ありがとうと
ひとこと 告げて 行きたいけれど
舌がもつれて うまく 言えない
逢えなくなってしまう 気がして
さようならとは 言えない
陽だまりの 濡れ縁で 別れの写真
覗き見た 横顔で 父が涙ぐむ
あれほど 煙たかった 顔が
いまでは やさしく 見えてくる
玄関で 振り向くと 肩を叩いて
困ったら この家に 逃げて来い
家族に 愛想のない 父が
笑顔で 小さく うなづいた
胸に溢れ出る ありがとうを
伝えて 家を あとにしたなら
心残りは 消える けれども
忘れ物がなくなる 気がして
ありがとうとは 言えない
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