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人を殺そうと思った
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作詞 小雨ねむ |
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人を殺そうと思った
別に誰でもいいから
もう何もかも嫌になって
とにかく何かを傷つけたかった
適当な民家を選んだ
小奇麗な少し大きめの家
3足の揃えられた靴
テレビの音と笑い声
明かりのついたリビング
高そうなスーツの男
装飾品だらけの女
大きな白いソファ
赤黒く染め上げた
一瞬の悲鳴を
包丁で貫いた
僕の過去と共に貫いた
物のように転がった人と
人生の成れの果て
廊下から物音がした
向かうと戸のあいた押入れ
その前に立っていた少女が
青痣だらけの少女が
リビングを見て呟いた
すくわれたと
正しさってなんだ
生きるってなんだ
僕はもうわからなくなって
僕の顔を見る目の前の少女から
目を背けることしかできなかった
僕が握っているこの包丁で
君の親を貫いたこの凶器で
君の痣だらけの美しいその手で
すべてを赤く染めてくれないか
不揃いな黒髪
痩せこけた頬
細すぎる手足
ボロボロのスカート
立て付けの悪い押入れ
子供一人分の空間
床には食べ物のシミ
悪臭が漂った
2階にきちんとあった子供部屋
いいものであろうランドセル
電子辞書ときれいな制服
机の上に錆びたカッター
傷だらけの巾木
不自然に張り替えられた壁紙
1枚剥がせば壁中に文字
ごめんなさい
正しさってなんだ
生きるってなんだ
僕はもうボロボロになって
僕を取り囲む心の声から
耳を塞ぐことしかできなかった
僕が握っていた反社会性で
君の親を殺したあの殺意で
君の細すぎる純粋なその手で
世界を赤く染めてくれないか
少女が両親に触れ
冷たいその手に何を思う
少女が僕を見つめている
揺るがないその目に何を思う
これからどうしたいのか
生きたいのかそれとも死にたいのか
僕を殺したいのか 僕は殺されたい
すべてを0にしてほしい
僕らは一体どうすればいい
幸せってなんだ
生きるってなんだ
僕はどうしようもなくなって
ただただ少女の手のひらに触れた
そのあたたかさに涙が出た
僕が握っている小さな命を
君の親が虐げたこの命を
僕の罪だらけの醜い命で
どうか救って
誰か救ってくれないか
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