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ヴァイオリニスト
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作詞 小雨ねむ |
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冷たい牢の中で思い出していた
天才などと呼ばれ称賛を浴びていた日のこと
ひとり照らされたステージ空虚な目には眩しくて
湧き上がる聴衆空っぽないつもの光景
とうの昔に自分は死んだ灰色の空の下
雨ざらしに紛れて隠して流して
大人たちに貼られただけの天才のレッテル
今となっては犯罪者なんて呼ばれちまうが
今でも自然と手は動く
記憶とともに汚してしまったヴァイオリン
このメロディを奏でて
美しくない人生の美しくない音色
出るのは錆びついた鈍い音後悔に変わる醜い音
僕の願いを叶えて
夢も何もない僕のたった一つの望み
くだらないこんな人生に
生きる理由を与えてくれないか
冷たい牢の中で思い出していた
父親に殴られてはただ弾き続けた日のこと
唯一守ってくれていた母も出ていった
独りになってもとからなかった希望もその他も失った
感情を殺して機械のように称賛にも心は動かず
あの人に殴られるから弾く理由なんてそれでよかった
ステージ前最後に見た景色は
赤く染まった手のひらと倒れ込んだあの人
流れていった大切なもの
あの人のいないコンサート
理由も消えたのになぜ弾いたのだろう
このメロディを奏でて
美しくない人生の美しくない音色
出るのは錆びついた鈍い音懺悔と落胆を乗せた音
僕の願いを叶えて
夢も何もない僕のたった一つの望み
くだらないこんな人生に
生きる理由を与えてくれないか
僕のためだけに光る照明落ちる影が存在の証明だった
ここにいると鳴らす音は反響もせずに消えていく
冷たい牢の中じゃそんな音を聞いてくれる人はいない
全部自分で壊したもの
でも僕は弾いていたんだ
最後の拍手が鳴り止むまで
このメロディを奏でて
美しくない人生の美しくない音色
出るのは響かない虚無な音駄作に等しい日々の音
僕の願いを叶えて
夢も何もない僕のたった一つの望み
くだらないこんな人生を
ともに過ごした音聴いてくれないか
冷たい牢の中で思い出していた
鳴り止まない拍手に涙した最初で最後の日のこと
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