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ある路地裏の話
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作詞 逝蝣(ゆゆ) |
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此処は下町、喫茶店
扉の右手は紅い花 扉の左手は黒い花
店の中身は薄暗がりで
愚痴や談笑零れてる
美味しい焼き菓子 美味しい珈琲
不良娘の唯一の癒し
そんな時節に男と出会った
男は娘に愛を囁き
飢えた娘は喜んだ
其の喜びの大きなこと
流れるジャズに身を委ねていた
其れから月日を重ねていった
幸せに為れると思っていた
石畳を軽やかに歩いていた
だけど
其の時娘は見てしまった
他の娘と微笑む男の姿
裏切られた、全部嘘だった、
渦巻く感情 男は知る由も無い
荒れた娘は彷徨い続けた
好きでも無い男と遊び暮らし
石畳を二人歩いていた
そして
その時男は見てしまった
男は娘に何も云わずに
ムッとした侭帰って行った
男は娘を棄てて行った
娘は一言呟いた
「何されたって、アンタが一番だったのにサ…」
あの頃の幸せな笑顔は
悔しさと喪失感に塗れた
ニヒルな笑みへと…
「全部アンタが、いけないんじゃァ無いか…」
此処は下町、喫茶店
扉の右手は紅い花 扉の左手は黒い花
店の中身は薄暗がりで
愚痴や談笑零れてる
美味しい焼き菓子 美味しい珈琲
路地裏のゴミ捨て場には
娘が一人、猫が一匹
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