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冬のにおい
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作詞 かよ |
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くしゃみをひとつして外に出る。
どうりで冬のにおいがした。
心地よい切なさに目を閉じる。
そういえばこんなこと、前にもあった。
思い出す帰り道。
もう陽が沈んだ町を
まだ帰りたくなくて
ゆっくりゆっくり歩いてた。
ポケットの中の暖かい手とか
あの人のコートのにおいとか
靴を引きずって歩く音
全部全部好きだった。
少しだけ鼻をすすって歩く。
髪にもうつった冬のにおい。
少しだけ胸が痛くなって
大きくため息をついた。できるだけ大きく。
幼すぎたあの頃の
もう通わない心を
互いに許せなくて
悲しくて痛くて泣いた。
遠回りした帰り道とか
悪ふざけみたいにするキスとか
ふたつ並んだ影でさえ
全部全部好きだった。
好きだったのに。
この季節が来ると
いつも思い出してるよ。
下を向いてただ静かに
鼓動に耳を澄ませていた。
あの時の心地よい切なさを。
悲しいくらいの幼さを。
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