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崖っぷちからの生還
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作詞 higot |
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「おれが死ぬか 倒産か」
つい半年前 そう言っていた
男の会社は 立ち直りつつあり
わずかずつながら 利益あげ
その立ち直りの陰には
男の妻の内助の功
バブル絶頂期のころは 派手な衣装に身をつつみ
連日連夜 銀座で散財 近所つきあい皆無に等しく
大豪邸に居を構える 浮世と離れた存在だった
夫の会社 傾きはじめ 収入かなり減ったようで
まず派手な遊び しなくなり 質素な服装 薄化粧
そのうち家も手放して 普通の一軒家に移り住み
町内会では 明るい声と笑顔であいさつ
近所の人は そんな彼女に
最初は冷ややかな視線向け
井戸端会議始まって 口をつくのは
決まって彼女の凋落ぶりだった
その声が彼女に届いていないはずもなく
とてもみじめなものだったろう
それでも彼女は 仕事で大変な夫に相談もせず
耐えて 気丈に振舞っていた
彼女の変貌が 本心からのものと
近所に周知された頃 いつしか陰口無くなって
彼女は地域に温かく 迎え入れられた
男も妻が変わったと感じ、会社再建に力注げた
「内助の功」はまだ続く
夫の会社の経営状態 内心とても気になりつつも
今日も新しいボランティア
老人会のお手伝いで 進んで喜び働いて
周りの人々 感謝・感心
ひとりの穏やかな紳士は特に 彼女の働きぶりに
目をみはり 家庭で何か事ある毎に
彼女を働き手として呼んだ
紳士はその実 昔活躍した 有力なる篤志家
彼女の家庭の状況や 夫の会社の状況を
細かに聞くうち ついに融資の話持ち出した
はじめ固辞していた夫妻 紳士の度重なる説得に
最終的に 首を縦に振った
・・・会社の危機は乗り越えられた
未だ楽になったわけでなく 苦しい経営続いているが
夫婦二人三脚で 乗り切っていく覚悟と喜び
紳士の前で約束した 「妻を夫を大切にします」
もう金持ちではないけれど 以前は感じ得なかった充実感
がけっぷちに立たされて 行くも戻るも本人次第
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