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棘
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作詞 櫻井日向 |
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此処に綺麗な華が一輪有ります
色は鮮やか 心を奪うくらい
香りは仄か 優しくなれる
でも 名の無い此の華は
其れだけで決めつけられる
名で何もかも決まるのならば 名を付けよう。
例えば 真っ赤に怪しく美しい『薔薇』と。
華は名誉と引き替えに心を失い
決めつける側に廻った
どんなに人を傷つけようとも
何も感じなくなったのだから
そして、罰を受けた。
誰も触れないように、
誰も近づけないように 棘を体につけられた
ある日華は避けられるようになった
来る日も来る日も避けられた
華はようやく、醜く成った自分に気が付いた
心から涙をこぼし 自分を憎んだ
傷つけてきた人達に対し 後悔した
幾日か過ぎ 華は枯れかけた
生きる気力も全て失ったから。
そして只来る死を待ちながら呟いた
「…こんな醜い私を、どうか憎悪して下さい」
「顔を上げて」
天の迎えが来たような、寛大な声。
「自分を憎むことは有りません。
只、犯した罪を生きて償いなさい」
華は戒めに名を捨てた
是以上誰も傷つけないようにと。
華は精一杯生きた。誰よりも美しく咲いた。
そして枯れた。悔いはない。
誰からも愛される華になったから。
大切なのは名声ではなく
思いやりだと気付いたから。
華が咲いていた場所に新しい命が生まれた
あの華によく似ている
色は鮮やか 心を奪うくらい
香りは仄か 優しくなれる
後生の名のない華はまた愛された
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