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心象風景
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作詞 野馬知明 |
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朦朧とした光の裏の世界
その淵の白い闇の世界
底に棒状の玻璃があるのです
それは次第に深淵に吸い込まれて行くのです
玻璃は真っ赤に爛れた煉獄の裂け目の中に
微雨に濡れ乍、屹立しているのです
縹渺とした白い闇の拡散
その先に白銀に聳える山巓の様なもの
その白い翳が底知れぬ沈黙の井戸の中に吸い込まれているのです
それは斜めにざっくりと大きな口蓋を開けていて
そのすぐ下の磨崖は
ごつごつとした黒い岩肌になっているのです
幽かな光芒を柘榴のように受け
赤紫色に嗤っているのです
その奥は余りにも昏くてよく見えません
でもそれと同じ様な物から成っているらしいのです
そして白い闇は怖ろしい程の速度で螺旋を描き
その深淵に吸い込まれ
轟轟と地響きを立てて嘲笑うのです
ついには仆れて仕舞うのでした
もう一つの世界―ー
それがこの深淵の奈落の下にあるらしく
玻璃の表に沿って流れ落ちる閃光が
とてつもなく渺漫としたその輪郭を
極度にぼんやりと映し出したのです
軈て大地は高周波の振動を蠕動し
玻璃は真っ二つに裂け
その分裂した間隙に
白い闇が激烈な渦を巻き
忽ちの内にそれを取り巻き
白と闇の斑の模様を創るのでした
白と闇は渾然一体となって
謳い、うねり、呻き、唸るのです
すると玻璃は左と右とでひと塊となって
白と闇の犇めきに押し潰されて
裂け目の中央までやって来るのです
それから白い闇が闇を手の形に取り囲み
それが玻璃を上から突き落としたのです
でも玻璃はすぐ浮上して来て
亦、転落して行き
それを幾度となく際限なく
いつ果てるともなく繰り返すのでした
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