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ことばのみずがめ
作詞 カナラ
 縫い付けられた口からは
 傷穴が痛んで 言葉も出ない
 死んでいく人々を 眺めることしか出来なくて
 こっそり泣いた夕べ

 口が無ければ手があると
 ひとつ差し伸べてみた
 どうやら行き交う人々には邪魔だったみたいで
 ひどくがっかりしたのを覚えている
 
 ああ またこの日がやってきた
 泣きたくても泣けない日が
 心が疼いて 心が震えて仕方が無いのに
 どうしようもないのに
 今日も蓋をする
 不確かな毎日を生きる心を いっぱいの水に浸して
 ゆらり ゆれながら
 ぼんやりと虚空を見つめた

 ただひとつだけ 僕が知ってることがあるんだ
 ひとは生まれ 死んでいくということ
 僕から奪っていったあの人も 知らぬうちに歩いていたあの日も
 やがて陽が堕ちていくということ

 希望を見出すその芽の先の
 泪がぽつりと地面に落ちた
 しかしそのことにすら気付かれず
 悲しみの夜に沈んだ

 ああ いつになったら
 この夜は終わるんだろう
 眠る夢の結末を 目覚めていく街のネオンを
 どうしようもない感情で
 今日も蓋をする
 「不確かな毎日を生きる心の しまい場所は忘れずに」
 しんしんと積る雪の上
 その言葉を胸に刻んだ

 春になると 生命(いのち)はいっせいに息をする
 重ねあい 交じりあい
 夢はふたたび淡く光る
 そしてタイムカプセルを掘り返すように
 僕は夕べの土を掘り起こした

 刹那に 心は彩りを取り戻す
 今までの景色が うそみたい
 泪も 手のひらも ここにあるのだということ
 世界は 回っていること
 
 忘れかけていたことは
 僕には言葉があるということ
 僕には心があるということ
 ひとつの存在だということ
 何も無い日常を 何かを感じながら生きてきたということ
 
 「いつか太陽は昇るので、生き続けなさい」と誰かが言った
 少し振り返って また前を向く

 街は朝日で照らされ
 新芽から朝露がぽつりと落ちた

本作品の著作権は作詞者に帰属します。
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公開日 2019/11/05
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コメント 初投稿です。
自分の胸のうちを思うように語ることが出来なくなってしまったことに対する自分の心情と、自分がそうなってくれたらいいな、という淡い期待をこの詩に込めました。
コメント等くださると嬉しいです。
カナラさんの情報











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