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初恋
作詞 yuu16tc
体育館裏の細い廊下に

眠そうな顔をして歩く生徒達

黒一色が広がる風景に1人だけ

真っ白なカーディガンの女の子

色素の薄い栗毛色の髪に

顔の面積に合わない大きな瞳

毎週始まる朝礼のたびに

視界に入る1人のその子に

目が釘付けになっていた


ポケットに手を入れ歩く

寒さで凍えるあの日

その子から視線を感じるようになる

何もない日常に熱い何かが流れ込んだ

気付けば毎週感じた確かな視線

いつのまにか顔を伏せて廊下を歩く

怖いように始まっていく運命の音が

たしかに耳元で聞こえた

雪の白が校庭を薄く包んでいたあの日

ファンなんです

予想外の一言に

鈍器で叩かれたような衝撃が走る



気がつけば視線の先にいる白のあの子

その回数が徐々に増えていく

憧れの全てが詰まったような瞳に

真っ直ぐに向き合う事が出来ない

逃げるように後にした教室で

水色の小さな手紙を渡された

人と向き合う事から逃げてきた俺の

初めての冒険が始まった


1学年下のAB型の彼女

彼女の為の文章に精一杯心を込めて書く

真っ直ぐな彼女に嘘なんかつけない

気が付けば歳下の彼女に振り回される日々


仲良くなっていって

手紙で会う時間帯を決めて

バレないように放課後の屋上で

2人で落ち合うようになる

彼女の姿を階段上から見つけるたび

僕の心は跳ね上がる




ファンクラブを作りました

私はファンクラブの会長です

友達を勧誘しています

恋に恋しているのかと疑っていた

第2ボタンは男から渡すものです

天然なのか本気なのか分からない

精一杯な俺の事を知らないだろ?





1つでも主導権を握りたくて

バレンタインの2月14日

彼女に遠回りさせて

家から離れた赤い遊歩道のベンチに

彼女を腰掛けさせる

チョコを作った彼女に逆に告白をしてみたら

信じられないような顔で

俺が書いた手紙を何度も読み返していた

返事がなかなか貰えない事に不安になった俺

でも震えながら両手で握った手紙を

何度も読んでいた彼女に

最初の気持ちは消えていた

もっと大きなものを手に入れた気がした




2人で迎えた初めてのクリスマス

地元から少し離れた駅で降りる

お城のような場所へと

手を繋いで2人で歩く

あの日と同じように空には初雪が舞った

緊張しながら入ったホテルドルチェ

見慣れない光景に心は高まるが

誤魔化してTVを付け

冷蔵庫のジュースを飲む2人

お風呂に入った後

失敗に終わったほろ苦い記念日



その年の大晦日の夜

初めて泊まった彼女の家

初めて人の暖かさを知ったあの日

この人を一生守ろうと誓ったあの日

お互いの家族にも紹介した

家族ぐるみの付き合いになった

この関係がいつまでも続くと思っていた




卒業して別々の学校になってから

近くの神社で会うのが2人の約束

毎日彼女といても全く飽きない

怖いくらいに好きになっていく

赤い痕跡が滲む祭壇は

2人だけが知ってる秘密にした

中学卒業の日 最後の思い出に

生徒達が帰った後

2人で会っていた思い出の屋上へ

屋上に沈む夕日を背に抱き合った2人

先生達に見つかった時

終わったと思った事は忘れない

その時にイタズラで書いた相合傘は

次の日後輩が掃除していた



少しづつ綺麗に大人になっていく彼女

イルミネーションツリーの前で手を繋ぎ

水族館ではしゃいでいた

花火が見えるTDLホテルではバスローブを着て

2人で朝を迎えた



親から逃げたくてがむしゃらに非行に走る俺

ただひたすら自由が欲しかった

そんな俺に必死に付いていこうとする彼女

非行に走り 不良の女達とも出会い

彼女とどんどん距離が開いていく

俺の浮気をいつも心配していた彼女

そんな彼女を突き放してしまった俺

別れては付き合ってを繰り返したあの当時

電話先で泣きながらよりを戻してほしいと

言った小さなあの子

もう戻っては来ない 2人で過ごした日々

彼女を悪い道へと引き入れて終わらせた

そんな結果が罪悪感として

心にずっしり残った2人目の彼女

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公開日 2020/03/09
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