|
|
|
いい人になりたい
|
作詞 ふじ井 |
|
「もう好きにしなよ。」
「おかあさん」が言った。
今まで全部きめてくれてた 「おかあさん」が言った。
突然手を離されて 僕はどう立てばいいかわからなかった。
いい子になれば ちゃんと見てくれますか。
僕は「いい人」になるんだ。
ちいさな僕は言った。
でもどうやってなるのかなんてずっと解らずにいた。
今日のテストの点が良かった。
まだ誰も褒めてはくれない。
明日はもっとがんばるから そしたら見てくれますか?
明日はもっとがんばるから そしたらいい子になれますか?
いい子になればきっと褒めてもらえるから。
気づいたら 見てももらえなくなってた。
「こんなずじゃなかった。」
しゃがみこみ僕は言った。
特別になれると思い込んでた 凡人のなりそこないだった。
今日も誰の役にもたてなかった。
もう誰にも見向きもされない。
明日なんかもうこなければ そしたら楽になれますか?
明日なんかもうこなくていい そんなことまだ考えている。
「いい人になるんだ」 もう叶わないよな。
気づいても もう遅かったんだ。
いつか、僕ら「大人」になるんだと思っていた。
思っていた。
「もう好きにさせてよ」
「おかあさん」が言った。
ずっと「僕」をくり抜いてた 「おかあさん」が言った。
今まで全部きめていたくせに おかしいじゃないか。
「いい人になりなさい」 「いい人」ってなんですか?
明日はもっとがんばるから そんなのもう遅いんだよ。
明日なんかこなければ きっと楽になれるんだ。
特別になんかなれない 凡人ですらない。
特別になんかしてくれない 誰も彼も
明日はもっとがんばるから すがりつく先もない。
明日はもっとがんばるから それだって全部無駄なんだよ。
明日はきっといい日だから そんなこと歌うけど。
この手を伸ばしても 触れさせてもくれないくせに。
「おかしいよ」「おかしいよ」
僕は「いい人」になりたかった
いい人になれば誰かの「いちばん」になれると思ってた
最初っからいい人になんかなれるはずなかった
だって「おかあさん」なんていなかった
「もう好きにしなよ」
勝手に生み出されて言われた。
立ち方も知らない僕は転んだ。
好きにしなさいと言う でも死ぬのは許されない。
僕らは 僕らの命の「権利」を持たない。
|
|
|