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夜明け前
作詞 ろいろい
「まだ明けないよ」と、僕の声が
静かに脈打つボイラー室
きっと外では偃月が 揺り籠みたいに揺れてる頃

渇いた目が痛み出して
灯油の匂いに軽い吐き気
僕らはいつも閉じ込められてた

煤けた頬の君が肩に寄りかかって寝息立てた
此処が唯一の安全地帯
虫も獣も知らない世界

君が自ら必死になって付けた傷を撫でてみたら
手に残ったその感触が
哀しみを連れて来たんだ

ずっと君と昔話してる
夢の話をしているんだよ
大木も全て倒れた
樹海のように壊れたマチ
君と昔話してる
夢の話が途切れる前に
僕らが死ぬ前に
誰か夜を止めてくれよ

幼い頃、外に逃げたとき
僕らを睨んだデイライト
真っ黒な空で忌み月が煙に包まれて嗤っていた

化学汚染やらペスト菌
溝鼠の目が光る路地裏
僕らは足を止めることをもうやめた

そんな昔話を続けてる
愛の話をしているんだよ
魚が打ち上げられていた
荒れた風が吹き上げていた
君と昔話をしては
涙が唯一の星になった
誰かこの子を救ってよ

「まだ明けないよ」と、僕の声が
静かに放り投げられては
君の無理に出してる声が、積もっていくボイラー室
「まだ明けないよ」『大丈夫だよ』

「僕ら、きっと生きて帰れるよ」

「…帰れるよ」

ずっと君と歌を歌い合う
希望の歌を歌いあってる
誰かが失敗したせいで
劣化した温もり零れるマチ
君と歌を歌い合う
この歌が終わってしまう前に
マチが闇に襲われないうちに
夜を止めなきゃ

夜を止めなきゃ

夜を止めなきゃ

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公開日 2017/08/23
ジャンル
カテゴリ 医馹
コメント 科学者たちが目を輝かせて「成功だ」「未来は明るい」と騒いで、周りの大人たちも、パパもママも喜んでいたのを覚えている。今は木も花も草もなくて、街が汚れていて、パパもママも病気になって死んじゃった。妹が「夜が怖い」って言う。僕ももう10歳だけどまだ怖いよ。でもまだ夜が明けないんだ。肩を抱き合って眠る。機械まみれの都市で生きてる僕らの感覚は麻痺していて、ボイラー室の音が子守唄みたいで一番落ち着くんだ。
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