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ミストレイン
作詞 悠馬
あれは、土砂降りの日だった。
彼はあたしの窓をたたく。
雨と彼のたたく音が、
眠ったあたしの心へと沈んだ。

「こんばんわ、お嬢さん。
 一晩だけ、おいてくれないかい?」
目覚めたあたしは彼を見た。
ずぶ濡れの君は赤い髪をかき上げて笑った。
「旅へ出たとたん、この天気だ。
 俺はどうやらついていないらしい。」

彼は真っ青で、でも優しくて。
あたしは一晩で恋に落ちた。
隣で眠る彼を見ては、ふっと頬が緩むのを知った。
どこまでも続く夜は短く、
目が覚めれば彼はいなかった。
たった一晩だけの王子様。
ベッドに白い紙が落ちていた。

それは、彼の残した、
たった1つだけの証。
彼が書いたその文字達、
泣きそうな私を包んだ。

「ねぇ、もう来ないかしらね?
 もう1度だけ、会いたいけれど...」
目覚めたあたしは空を見た。
今日は、こんなにも空は晴れているのね。
「もう昨日には、戻れないのかしら。
 彼、今日は野宿なのかしら...」

一晩だけの物語、それは短くて。
あたしはきつく目を閉じた。
まぶたの奥の彼を見ては、ふっと頬が緩むのを知った。
彼を見ていた時間は短く、
目を開ければ彼はいなかった。
たった一晩だけの王子様。
あたしのこと、迎えに来て?

それから時は過ぎ去って、
1日、1週間、1ヶ月。
やっぱり彼は戻ってこない。
そうよ、そうよね、旅人だもの。
2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月。
隣に新しい家が建った。
久しぶりのお隣さん、
挨拶に来たときドアを開けたら、
あたしは立ってられないの。

ずっと夢見て、諦めて。
そんな彼は、現れた。
目の前にいる彼を見て、つっと頬に何かが伝った。
今いる彼は本物で、
何度見ても、そこにいた。
彼は笑った、あたしを見て。
それから優しくなでてくれた。

「ずっと君のことが気がかりで...」

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公開日 2012/08/29
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