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ぼくのモチーフ
作詞 矢伏 紳
火星で暮らした日々
思い出すために
宇宙飛行士は渋谷で降りた

  星ひとつない雨上がり
  側溝に落ちた月を
  拾おうとして
  指すり抜けた

    シャッターは今も切らないままでいるよ
    写してしまったら止まってしまう気がして
    ここから眺める風景は
    変わり続けるぼくのモチーフ

付け焼き刃の知識
買い戻すために
グーテンベルクは古本屋に寄る

  信号待ちの昼下がり
  背表紙の取れた日記
  風に吹かれて
  車道に散った

    キャンバスは今も白いままでいるよ
    描いてしまったら描き上げてしまう気がして
    ここから眺める風景は
    終わることないぼくのモチーフ

 同じ形の雲はない
 昨日と同じ朝は来ない
 だったらぼくら
 どこに向かって歩こうか

 高架下にこだまする学生たちのよく通る声が
 ほとんど忘れてしまった夢のかすかな余韻が
 始発列車の連結部で泣いてる見知らぬ女子の涙が
 開け放した西窓に揺れるカーテンの皺が
 壊れて鳴らないグランドピアノの鍵盤の白さが
 電波の届かない場所におられた夜の出来事が
 約束が
 歌が

 歌いたいのにいつも
 美しすぎて歌えずにいる

本作品の著作権は作詞者に帰属します。
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公開日 2008/08/08
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コメント 最後の2行を付け加えるかどうかで随分悩みました。本当に言いたかったことはいつも言えずじまいなんですよね。
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