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70年の演技
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作詞 俺の心臓はトマトだ |
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死ぬ前にかいた汗が風になるまで
ぼくは役者だった
ばあさんになったって好きだよと言った女の
真剣な涙目さえカガミの代わりにして
ぼくは70年で終わった
聞いてくれるか ぼくはうんと小さい頃より
7つの姿見にかこまれながら育ったんだ
人魚の彫刻がさそってくるものもあれば
木のカラダをもった鳥たちが片羽を自慢する
彼ら、鏡たちは、とても美人なコレクションだった
7人のぼくとの語らいは
そうした妖精たちを交えてのステンドグラス
まるで映画のなかにいるみたいに7色だった
そうそう、ぼくの心の清らかなこと
他人は肌の下をうつしてくれる水面だった
素晴らしいのは、モノとは違って
それは波打つということ
誰かのなかで歪むぼくは、7人どころじゃないから
好きになった7人目の女は
そのなかで、まさに宝石のようなコイをのぞかせていた
いつしか天使7人の父親になり
毎日7時に眠るような歳になってしまった
ついには7歳になった孫に、あるとき友人7人を
完璧にコナゴナにされてしまってから
気付く
怒りにかられた息遣いを知られるなよという
まぎれもない自分の言葉に
もう見てはくれない彼らに
ぼく一人のスクリーンを、ぼく一人だけが見ていた
ということに
自分だけのはずがない
だれもかれもが、その顔や作文でぼくに触っていたのに
どうして知らないフリをしていたんだろうな
友だちの前では、正面からのぼくでありつづけ
両親の前では、横顔の切っ先のとがりを見せつけ
女の前では、斜め後ろで気にしつつ
子供の前では、背中しか見せない
最後のぼくは、斜め前から
ぼくのウケない芝居に、頭を「あーくそ」とそらしていた
7つの鏡にも思える、あらゆる自分の顔、顔、顔
7とは、ぼくの生きかたに通じる、ひねくれた槍だ
そしてもう、あと7秒で上映が終わる
そのなかで言える事は「人生7回もねーんだぞ、バカヤロー!」
人生7秒だってムダにすんじゃねーぞ、バカヤロー!
7秒で、だれかの命が救えるかもしんねーんだぞ、バカヤロー!
70のバースデーまでの7秒間
その槍はムダだったのかもしれない
ぼくは笑顔の役者だった
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